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その日、アデン王国の一角にある、たまごの部屋をのぞき見ている人がいたら、「世界青色コンテスト」に向けて特訓する挑戦者のように、顔を青くしてぶるぶると震える、たまごの姿を見ただろう。
その日、アデン王国の一角にある、たまごの部屋のそばで聞き耳を立てている人がいたら、世界中の文字を使っても決して言葉にすることは出来ない、奇妙な叫び声を聞いただろう。
その原因はつまり、たまごの宝物、失われた毛髪が、部屋から失われていたからだった。
たまごはまるでスロットマシンのようにまばたきを繰り返す目で、現場に残された一枚のカードを読んだ。
「失われた毛髪は預かった。――和田・リーブ21・アキコ」
たまごは耳から湯気を吹き出し、手にはホウキを持ち、目を白黒させ、足はがにまたになりながら、猛然と家から飛び出していた。
もちろん、和田・リーブ21・アキコから失われた毛髪を奪い返すために。
次へ
たまごは三歩進んでは二歩下がりながらも進んで行った。
やがて、石造りの門がいくつか並んだ、不思議な場所に出た。門には、それぞれ石像の飾りがついている。
ドラゴンの門をくぐる
ガーゴイルの門をくぐる
チェシャ猫の門をくぐる
門には関わらず進む
たまごはチェシャ猫の門をくぐった。
その瞬間、高速に垂直移動する感覚に襲われ、たまごは思わず身体をこわばらせた。
振り向くと、門はなかった。慌ててあたりを見回す。
そこはさっきとはまったく別の場所だった。
しばらく行くと、前から何者かがやってきた。
たまごは油断なく身構える。
やがてたまごの前に現れたのは、和田・リーブ21・アキコの手下の黒きぃちゃんだった。
パンチ
キック
逃げる
どう見ても、1人で太刀打ちできる相手ではない。たまごは一目散に逃げ出した。
足の速いのが幸いしたのか、黒きぃちゃんはもう追って来ない。たまごは呼吸を整えて、別の道をたどりはじめた。
次へ
たまごはてくてくと歩いていった。
そうするうちに、たまごは深い谷を見下ろす場所に出た。
左手に谷を渡る吊り橋があり、右手には谷沿いの道が長く伸びている。
吊り橋を渡る
谷沿いの道を行く
たまごは横手に谷を眺めながら、そのまま道ぞいに進んでいった。
ぶちぶちっ、後ろで不穏な音がしたので振り向くと、風にあおられた吊り橋が谷底に落ちていくところだった。
たまごは心底ほっとした。
しばらく行くうち、たまごは何か身体がぞくぞくしてきた。
(何だろう…この感じ…百戦錬磨の漁師に投網をかけられているような…この…感じは…)
たまごははっと気づいた。
(視線だ!強烈すぎて気づかなかったけど…これは視線だ!めっちゃ見てる…俺、今、めっちゃ見られてる!どこだ?どこからだ!?)
たまごはきょろきょろと見回した。
視線の発信源は木の陰にいた。
「だ…誰だい?そこでめっちゃ俺を見てるのは誰だい!?」
たまごは叫んだ。
次へ
「やあやあ、これは奇遇だね!」
そう言いながら木の陰から出てきたのはベレンコ中尉だった。
たまごがベレンコ中尉の違和感のあるフランクさにあっけに取られていると、「何してるの、こんなところで」とベレンコ中尉は聞いてきた。
たまごは事の経緯を説明した。
「…と、いうわけなんだ」
「へ~。ほ~。へ~」
ベレンコ中尉は聞いているのか聞いていないのか分からない相づちを打って、「ていうか。たまごのこと好きなんだけど。結婚して下さい!」
「えー!?」
はい
いいえ
(いきなりかよ!冒険の途中だぞ…しかも命がけの…!その途中にプロポーズって…するかぁー?…でも…ベレンコ中尉か…)
たまごはベレンコ中尉との結婚生活をしばらく想像してみた。
朝…いってらっしゃい、ちゅっ。
昼…エプロン姿…。
夜……。
(…まあ…あり…かな…)
「うん、いいよ!」とたまごはこたえた。
するとベレンコ中尉は、「ごめん、やっぱりやめた!」
「WHAT!?」
「だって、なんか、結婚生活を想像してるみたいな顔がキモかったんだもん。時間とっちゃってごめんね。冒険がんばってね!」
そしてベレンコ中尉は風のように去っていった。
たまごはよろよろと歩き始めた。
「失われた毛髪…待ってろよー…」
次へ
たまごは元気に両手を振りながら歩き続けた。
数日前に降った大雨のせいか、土砂崩れが起こり、道が完全にふさがれている所に出た。
迂回路は左右に別れている。
右へ進む
左へ進む
左側の迂回路に進んだ。ずぶずぶとぬかるみに足を取られる。
何度も転んで泥だらけになりながらも、たまごは突き進んでいった。
しばらく行くと、井戸があった。
少しのどが乾いていたたまごは井戸をのぞきこんでみた。
井戸は深く、水があるのか分からない。
たまごは近くに落ちていた石を投げ込んでみた。
数秒後、井戸の底から、ボチャン、と音が聞こえた。
水はあるみたい、と思った時、まばゆい白光が井戸の中からあふれ出た。
井戸の上に現れたのは、神々しい光をまとった女性だった。
美しく優しい顔だちだが、額からは血をだらだらと流していた。
「私はこの井戸の女神です」
女神はにっこりとほほえんだ。
「あなたが落としたのは、この金の塊ですか?それともこの銀の塊ですか?」
女神の細い腕には巨大な金と銀の塊があった。
金の塊
銀の塊
どちらでもない
「いいえ」たまごは正直にこたえた。
「俺が落としたのは、金の塊でも、銀の塊でもありません。ごく普通の石ころです」
それを聞いた女神は、「あなたは何て正直者なのでしょう。ごほうびに、この金と銀の塊もさしあげましょう」円盤投げの選手のように、その場でぐるぐると回り出した。
「け、結構です!」
命の危機を感じたたまごはあわてて断り、その場から逃げ出した。金と銀の塊が、びゅん、と耳のそばをかすめて飛んで行った。
次へ
たまごはずんずんと歩いていった。
すると、ちょっとした広場に出た。
中央に小さな泉があり、道はそこから三方向に分かれている。
東へ
南へ
西へ
たまごは西の道を選んだ。
その先は、樫の木が立ち並ぶ、小さな林道になっていた。たまごは風景を楽しみながら歩き続け、林を抜けた。
しばらく行くと、道ばたに敷かれたゴザの上に、ぼろぼろの服を身にまとった人が座りこんでいた。髪の毛は伸び放題で、前にはからっぽの空き缶が置かれている。
(なんかやばいかも…)
たまごがそっと前を通り過ぎようとすると、「おめぐみを…」と声をかけられた。
(やっぱ来たー!)
お金を入れてやる
黙って通り過ぎる
たまごはポケットを探った。
「え、えーと、赤い羽根募金かなんかですかね。ええ、俺もボランティア活動は常々したいと思っていましたんで。こういう形でご協力させて頂けると、ありがたいかなーってね。いやーラッキーだなー。はい、どうぞ。ていうかハイリックじゃん!」たまごは思わず声を上げた。
ゴザに座っていたのはハイリックだった。
次へ
たまごに気づくと、ハイリックはぶるんぶるん首を振った。
「し…知りませんですじゃ!わしはハイリックなんて言う、たいそうな、かしこそうな、かわいらしい名前ではございませんですじゃ!わ、わしの名は、えと、ズラーノッフ伯爵ですじゃ!ほ、ほら!」
ハイリックは両手でほっぺを押しつぶして、必死に白目を作った。
「ハイリックですかな?これでもハイリックですかな?」
「いや…その顔で確信したよ!間違いなくハイリックじゃん!何してるんだよ…どうしたんだよ?」
「キ…キ…キエー!」
錯乱したハイリックはいきなりたまごにつかみかかってきた。
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